新しい板倉の小屋づくりがはじまります―方丈板倉「斎」

日本板倉建築協会では、新型感染症拡大後の新しい居住様式の提案として、板倉構法による3坪の小屋、方丈板倉「斎」(さい)を企画・開発しました。現在この新しい板倉小屋の1棟目が建設されています。順次情報を公開予定です。

方丈板倉 斎(さい) 危機を生きのびる想像力、新たな生き方とすみか

人類は生きのびるために大きな転機にさしかかっている
急速に拡大してきた大都市への集中から山野田園への分散が今始まる
それは密集閉鎖居住から分散開放居住への転換でもある
20世紀末から日本列島は地震、津波、噴火、台風、洪水と度重なる災害に見舞われている
その度に人と財が大都市へ集中することの危険性は指摘されてきたが、
その拡大に歯止めがかかることはなかった
大都市への致命的な打撃とはならなかったからである
しかしながら新たな感染症の脅威は地球上のすべてに平等に降り注ぎ
むしろ大都市に容赦ない大打撃を与えた
いまこそ大都市集中に歯止めをかけ分散居住を進めるときである
その確かな第一歩として小屋、斎(さい)をつくり始める

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず(方丈記より)

斎(さい)とは、ものいみ ある期間、食や外出などをつつしみ、
心身を清めることおよびそのへやの意味なり
斎(さい)は母屋を補い
あるいは働くために
あるいは楽しみのために
あるいはひきこもるために
あるいは災難から身を守るために
あるいは祈りと安らぎのために
母屋と離れてあるいは庭先にあるいは山中にあるいは海辺に建つ
その土地にあわせて容易につくれるよう
どこにでもあり運ぶに軽いスギ材をもってつくり
組み立て解体自在な板倉構法となす
その大きさは方丈(3m四方)
屋根は茅であるいは樹皮であるいは土で葺く
その姿は里山のごとし

淀みに浮かぶうたかたは
かつ消えかつ結びて久しく留まりたるためしなし
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし(方丈記より)

今から800年前、平安時代の終わり頃、京の都は地震、台風、竜巻、大火、飢饉と度重なる災難に襲われ、400年間にわたって繁栄した平安京はあっけなく崩壊した。その有様に無常を感じた鴨長明は京都南部の日野山中に閑居隠棲して方丈記を著した。その閑居が一丈四方であったことにその書名の由来がある。自ら作事したこの小さなすみかに、長明の無常観と生き様が見事に表されている。

それから400年後の戦国時代、再び動乱の世の到来で、千利休は四畳半、小間の草庵茶室を考案し、戦乱で荒廃した社会と人の心に救いと安らぎを求めた。その草案茶室は数寄家造りとしてその後の日本家屋の原型となった。
それからさらに400年が過ぎ、ふたたび大地震と大津波、台風と洪水と度重なる災害に加えて新たな感染症の脅威にさらされている。
今こそ我々はこれらの先人の知恵に学び、新たな生き方とすみかを想像しなければならない。
方丈板倉斎(さい)はその小さな一歩であるが、大きな危機を生きのびる想像力を呼びさますであろう。

安藤 邦廣
建築家 日本板倉建築協会代表理事 筑波大学名誉教授
2020年8月18日

趣意書

【問合せ】
日本板倉建築協会事務局
TEL 029-893-3346
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